「関心領域」感想 女主人は前屈みでどすどす歩く‐関心と感覚について‐/日常の風景で描かれる最大の犯罪と恐怖

by  Couleur ( Pixabayより)
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関心領域

The Zone of Interest   
2023年(米・英・ポーランド)


関心領域

/Amazon Prime Video/プライム会員見放題作

監督・脚本/ジョナサン・グレイザー  音楽/ミカ・レヴィ  撮影/ウカシュ・ジャル
出演/クリスティアン・フリーデル ザンドラ・ヒュラー

原作はマーティン・エイミスの同名小説。第二次世界大戦中大量虐殺が行われた、アウシュヴィッツの所長として有名なルドルフ・フェルディナント・ヘス。彼とその家族の日常を描いた作品。
≪配信情報は2024年10月のものです≫
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あらすじ

ルドルフと妻、5人の子どもたちは、大量虐殺が進む劣悪な環境の収容所と、壁一枚隔てて建つ屋敷で暮らしている。貧しい生まれの妻ヘートヴィヒは使用人もいる豊かな暮らし得て、広い敷地を美しい庭園に作り替えた。ルドルフは馬に乗って自宅から隣の収容所に出勤する。休日は川遊びや庭園パーティーなどを開き、家族や友人との時間を過ごす。

感想(ネタバレ注意)

嫌な音
嫌な音が鳴るような気がした。やはりそうでした。
理解できない異常な事柄が当たり前とされる、恐ろしい世界が展開するときは、よく嫌な音や音楽が鳴って直接感覚に訴えてくる。恐怖や不快を表すときは、怖くて嫌な音が一番伝わりやすいと思える。もしかして本当に聞こえるものなのか、などと。
ちょっとわからないのですが。
それから本当に、実際に聞こえたであろう、声や音もできるだけ正確に再現されている。
「戦場のピアニスト」(2002年)の時も、「音」がとても気になった。上階から落とされる車椅子、
銃声。聞いた事がない音がした。世界でもっとも恐ろしくて、理解できない、悲惨な事。

日常が描かれる映画
この映画は、「ドラマ」ティックではありません。「日常」がたんたんと続きます。しかしまったく普通の日常ではありません。
壁の向こうの映像はなく、見えないのですが、異様な事が丁寧に、これでもかと描かれていくんですね。長靴に血がついていたり、服が届いて山分けしたり。灰は庭にまかれ花が咲き乱れています。口紅とか、歯磨きとか、直前まで使っていた誰かの存在が生生しい、そういうものが登場する。
壁があるといっても、すぐ目の前に収容所の建物が並び、怒鳴り声や悲鳴が聞こえる。乾いた銃声がいつも鳴り、夜をてっして煙突からは火煙が上がり匂いも充満している(はずだ)。

ルドルフは女を買い、次女は眠れず赤ん坊は泣き、実母は帰ってしまう。元気なのは妻。夫が栄転する事になっても、彼女はやっと手に入れ作り上げた、理想の家から離れたくない。

妻ヘートヴィヒは前屈みでどすどす歩く。なんであんな歩き方するのだろう。
いかにも雑で、嫌な女と思わせる。
ヘートヴィヒ役ザンドラ・ヒュラーが出る「落下の解剖学」(2023年)と見比べようと思ったのですが、あちらは「ドラマ」なのだから、腰から上や表情のアップが多くてよく分らない。とにかくあの映画では歩き方は気にならなくて、ザンドラの印象が違っていました。「関心領域」の方は真横からのカメラで、どすどす歩くヘートヴィヒ、鍵を閉めて回るルドルフ、住人の日常を映し出すのです。

ヘートヴィヒの母は掃除婦だった(また掃除婦)。彼女が働いていたお屋敷の主は、塀の向こうの収容所に送られている。そのお屋敷のものは近所のひとに漁られた。先に取られてしまい、母親は狙っていたカーテンを手に入れられなかったと残念がる。しかしユダヤ人をどんどん殺して焼いている事実には耐えられず逃げ出してしまう。

関心と感覚
ヘートヴィヒはその事実をまったく気にしない。ように見える。
その二つの違いは大きいと思った。目の前で人間が殺され消滅させられている。それを何とも思わないというのは、、ハンナ・アーレントに悪の凡庸さと言われても、そこまで無感覚になれるのかちょっと信じられなかった。
これは「関心」の「領域」という映画なので、無関心というものの恐ろしさが表されていると思いますが、どうにもまず、感覚的に耐えられる事ではないのでは、と思ったのです。
しかし平気そうだし、実際にジュノサイドが起きると相手・集団は殺戮が平気なのだから、従わなければ自分も殺されてしまうし。。。
そもそも「感覚」というものもが、だんだん怪しいものになってきた。感覚的に、全部抹殺するのが正しいと感じるとか言われてしまうとどうしようもないし。
それから、
音や匂いが恐ろしいと言っても、毎日毎日それが当たり前だったら、「慣れ」てしまうのかもしれない。最初に嫌な音がする、と書いたのですが、不安が強い時は音を怖く感じるが、いつもいつも聞いていて慣れてしまうと平気になるかもしれない。

「慣れ」って・・・とても怖いですね。
妻の母は、初めて来て慣れていないから耐えられなかったのかもしれない。ヘートヴィヒには、全てが当たり前になってしまったのかもしれない。
だからやっぱり。自分の感覚だけを絶対と思わず、色々な領域に関心を持ち続ける事がやはり大切だ。。。


最後、暗闇に向かって階段を降りながら、ルドルフはこちらを向く。
彼が未来と、未来の観客を見ている様に思いました。
現在のアウシュビッツの映像が間に入るので。

私はあの行動をし、あの生活をし、この結果をもたらした。
私はあの行動をし、あの生活をし、この暗闇に降りていく。
でも未来から見る事はできない
(自分にしても。。。)


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アンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年)について


だいたい・・・・ジョナサン・グレイザー監督作の「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(2013)という映画が大好きなのでした。

/Amazon

いろいろとヘンな映画。大好きなどと言いながら、赤ん坊が浜辺で泣きっぱなしにされている所は嫌でよく見返せていないのですが、どうしようかと思っているうちに配信終了してしまいした。
空気感とか、何だか好きです。
で、あの映画に関して言いたい事があります。
後半の例のシーンに関してよく、ヨハンソンが
穴が無かったので驚いた、と言われるのですが。私は、
穴があったから驚いたのだ  と思います!!(以上)

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