by Petra from Pixabay
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瞳をとじて
Cerrar los ojos
2023年(スペイン・アルゼンチン)

瞳をとじて(字幕版)
/Amazon Prime Video(レンタル作)
スペイン映画は苦手苦手と書いていたのですが、そういえばビクトル・エリセ監督作は嫌いではありませんでした。(好きってわけでもないですが・・)
んまー「エル・スール」公開の頃って、映画サークルの男子さんとか「カメラがすごい!」とかって~評判すごかったですね。私にはそこまで・・・来なかったんですけど・・・💦
でも嫌いってわけでもなかったです。
「エル・スール」、「ミツバチのささやき」で大ファンが多い監督の、31年ぶりの長編映画です。
で、この映画はどうだったかというと、年齢を重ねた監督ならではの、後悔、忸怩たる思い、そんなのがたっぷりでとてもいいなあと思いました。
ところが!最後最後、大変な事が起き、私は大混乱に突き落とされてしまいました。
はい、例のものに関する事です。
ほんと、ひどい!監督!!ってな事になってしまったのです。
ってな事になった映画の、紹介と感想です。
≪2025年3月の配信情報になります≫
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STAFF / CAST
監督/ビクトル・エリセ
脚本/ビクトル・エリセ ミシェル・ガスタンビデ
音楽/フェデリコ・フシド
撮影/バレンティン・アルバレス
編集/アセン・マルチェナ
出演/マノロ・ソロ
ホセ・コロナド
アナ・トレント
あらすじ
※注 初めて観るとよく把握できず進んでしまうので、少し細かく書いています。
情報を入れず視聴する方がおすすめです!
1947年フランコ政権時代、”悲しみの王”という名の、パリの邸宅
邸に住む老人にアナキストの主人公が招かれる。かつて上海で生き別れてしまった、娘を探して欲しいという依頼だった。娘をつれて消えた妻は、扇子で顔を隠して視線を強調する「上海ジェスチャー」を娘に教えた。そのポーズで撮られた娘の写真を老人は主人公に託す・・・
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実はこの映像・・・
1990年に制作されるも、主演のフリオ(ホセ・コロナド)の失踪によって中断された、映画「別れのまなざし」の一部だった。
2012年、主演の失踪によって映画を完成する事が出来なかった監督、ミゲル(マノロ・ソロ)はテレビ局を訪ねていた。局は、22年も消息不明のフリオを取り上げた、ドキュメンタリー番組を作ろうとしており、彼も出演を受ける。
ミゲルはフリオ失踪後、監督として不遇の時代を過ごした。今は南方で細々と暮らす彼は、久しぶりのマドリードで若き日をなぞる。
彼が南に戻って数日後、番組が放送された。すると、事態が動き始める。。
感想
ネタバレ注意!
古くツタに覆われた屋敷。じっとり水分を含んだような濃い緑の庭には、過去と現在を同時に表すヤヌスの石像。重くて暗い映像。
大戦後間もない欧州、歴史といわくがたっぷりありそうな導入でいいなあと思っていました。
すると突然、現代の話に。
どんな話なのかよくわからないし、とても驚かされましたが。。。
撮影が中断されてしまった、映画監督の現在の話らしい。
冒頭の映像は中断された映画の映像だったのだ。ふむふむ
老人になってしまった監督。その老いた姿が続く。エリセ監督も老いを描くのか、それはとってもいい!
とても楽しんで観る。
彼は「南」に行ったのに、失意のままだ。
レンタル倉庫の中は、彼の過去が詰まる。
フイルムに囲まれた元編集者マックスを訪ね、未完成の映像を受け取り、デジタル化してもらう。
今は老人ばっかり。
自殺したのかどこかに失踪したのか。分からないままの役者フリオは、
次々と浮名を流しミゲルの恋人も奪った色男で、誰をも魅了する才能ある俳優であり、
酒で破綻しかけていた、ミゲルの友人だった。
アナは「ミツバチのささやき」のアナ
ミゲルはフリオの娘アナに会う。
なんと57歳になった「ミツバチのささやき」のアナのアナ・トレントが、フリオの娘のアナを演っている。目があの時のアナです。
ここも過去と現在が同時に表される感じですね。
今更父親の事を聞かれてもどうしようもないアナを前にして、ミゲルには会ってはくれるけど、ミゲルの監督としての存在意義はない感じです。
古本屋街では、元恋人に送った自著を見つけてしまう。謹呈文も写真も随分と恰好つけた若い自分を見て思わず目を背ける。見てられませんよね。
それでも元恋人に会いに行く。それでも元恋人の中に認められた自分がある事を見たくなる。でも彼女の中に残るのがフリオしかいないのは明らかだ。
全ての美しいものを徹底的にかっさらってしまう。ああいう男がいると、みんなが不幸になり、みんな永遠に得られない幸福を知ってしまうのだ。
監督として仕事も潰されてしまった、フリオという存在がどうであったか、ミゲルからフリオがにじみ出る。ただ消えてしまったフリオ。彼だけがうまく老いる事ができなくて現在に至らず、過去だけに生きている。しかも消えそうにない。
卑怯だ。うん、でも分るよ分かる。
本人は不幸なんだよ。だから酒に溺れてしまう。分るんだけどね。
ミゲルは南の感じのいい海岸で暮らす。
海辺のテーブルで、若い夫婦と酒を飲み、歌なんか歌う。素敵な暮らしだ。でも生活は楽ではない。だからテレビに出演したのだ。
街で会ったひとに、トレーラーハウスに住んでるなんて言わないし、翻訳と釣りしているなんて言う。本当は漁師の手伝いだ。そこもやがて立ち退かないといけない。そこもリゾートか、工業団地みたいなのになるのだろう。
ところが、
ネタバレ注意!
そんなミゲルのもとに、放送後フリオらしき人物が高齢者施設にいると連絡が入る。
彼は記憶を失い、施設で働く替わりに住まわせてもらっていたのだ。。。。
テレビ局に頼まれ、施設の近くに住むミゲルがフリオであるか確認するため会いにいく。
(フリオも南に行ってたんだ)
そして施設に泊まり、彼と一緒に過ごすようになるのです。
すっかり過去の記憶を失ったフリオといると、ミゲルにとって苦々しい過去が伴わない、若い時に出会って親友になった時のただフリオという人間と一緒にいるみたいな、
穏やかな時間が流れているように見えました。
アナにとっても、お父さんはお父さんだ。アナは目をつむる。むこうは娘とわからないとしても。
でも記憶を失ってもフリオが持ち続けていたものを見て、ミゲルはある事を思いつくのだった。
現在をたっぷり描くエリセ監督。とても良くて、この映画は好きなスペイン映画になったかもと、楽しんで観ていました。
ところが!大変な事が起きてしまった
大変な事が起きる
ミゲルがフリオの持っていた缶を開ける。その中のものが過去に結びついていくわけですが・・・
あれ?あれ、なんかあれ書いてある。
目をごしごしして、なんどか映像を止めたりして何度も確認する。
どう見てもあのマッチ、三段峡ホテルって書いてある・・・
創られた遠い国の映画を観ていて、突然そこに投げ入れられた現実
何が起きた?
私は・・・ずっと記憶を失っていた??
本当は私が記憶喪失者なのだろう??
さっきまでの事と思っている事は、記憶を失う直前までの、とても過去の出来事だったりして・・・
と、いう、混乱に陥ってしまったのですよ。
フリオみたいな、忘れたような捨てたような追われたような過去。そして現在。
(※注 三段峡ホテルがどうかしたとか、そういう事ではありません)
監督!ひどい!
監督には似た東洋な感じかもしれないけれど
こちらはそうはいかないんですよ。
もっと匿名的なものにしていただかないと!!
監督は私になにかを思い出させたいのですか???
でも現実、と思っている事は、どこにやったらいいのでしょうか?
まあ、町は嬉しそうですがね。
突然、と言ってもですね、十分あり得るとは思いますよ。そりゃね
広島に招かれたとな。案内されるのは、宮島か原爆ドームか三段峡よね。そりゃね。
ってな事で、しばらく鑑賞ストップ。
頭をぐらぐらさせなんとか最後まで。
ミゲルは持ち物を見て、フリオは過去のなにかを持ち続けていると思う。そして過去をみせようと思うのです。とても映画人らしい方法で。
ミゲルには、フリオが生きているか死んでいるか分からないような、もうどこにも行かなくてよいような、そんな場所にいるなんて許せない事だと思う。
ほんとうは
もう一つ悲しい事がある。ミゲルの家族が生きてきたら、彼も本当の老人になれて、どこに行くべきか探さなくてはならないような、人生ではなかったかもしれない。でもそれは失ってしまったから。
全てを忘れたフリオを許せないのは、ミゲルがフリオの事をだれよりも、、とても憎んで、とても愛しているから。
どんな感情よりも強いと思うのです。
ものすごく憎んでものすごく愛しているよ、お前の事を
戻ってきて欲しいのだ。
それで、ミゲルもフリオと戻る。それはたぶん、映画という場所ではないだろうか
そう思いました。
最後にフリオは瞳をとじる
でもやっぱり思う。
忘れたままが、フリオは幸せだったのにと。
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